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第 5 回:直感的にデータを探索!「Explore」機能で関係性を発見する

実体験から学ぶ:非技術者との協働分析

あるプロジェクトで、営業部長が Cypher コードは書けないものの、顧客ネットワークの深い理解を持っていました。Explore 機能を使うことで、彼の直感的な探索手法と私の技術スキルを組み合わせ、従来では発見できなかった顧客間の隠れた関係性を見つけることができました。

Explore 機能とは何か

Explore 機能は、Neo4j Bloom の技術を基盤としたノーコードのグラフ探索ツールです。マウスクリックだけで、まるでソーシャルネットワークを辿るように、データの関係性を探索できます。

Explore Feature Overview

Query タブと Explore タブの使い分け

私の実践的な使い分け基準:

Query vs Explore Comparison

Query タブを選ぶ場面

  • 明確な分析要件がある
  • 定量的なデータが必要
  • レポート生成が目的
  • パフォーマンスを重視

Explore タブを選ぶ場面

  • 探索的な分析を行いたい
  • 関係性の発見が目的
  • 非技術者との協働が必要
  • 仮説生成のフェーズ

Explore 機能の起動と基本 UI

アクセス方法

Access Explore

2 つのアクセス方法:

  1. Aura コンソールから直接

    • インスタンスカードの「Explore」ボタン
    • 最速で Explore 機能にアクセス
  2. Workspace 経由

    • 「Explore」タブを選択
    • Query タブと Explore タブの切り替えが容易

主要 UI 要素の理解

Scene(探索キャンバス)

  • 役割: グラフの可視化とインタラクション
  • 操作: ノードのクリック、ドラッグ、ズーム
  • 私の活用法: 分析結果のプレゼンテーション画面としても使用

Search Bar(検索バー)

  • 役割: 探索の起点となるノード検索
  • 特徴: 自然言語風の検索が可能
  • 実例: "TechCorp"、"John Smith"、"AI Project"

Legend Panel(凡例パネル)

  • 役割: データモデルの概観とフィルタリング
  • 機能: ノードタイプ、リレーションシップタイプの管理
  • 活用: 表示する情報の絞り込み

自然言語検索による探索開始

効果的な検索クエリの作成

実際のプロジェクトで効果的だった検索アプローチをご紹介します。

Natural Language Search

私の推奨検索戦略:

企業分析の場合

段階的検索アプローチ:
1. "Company"または具体的な会社名
2. 業界名 "Technology", "Manufacturing"
3. 規模 "Large company", "Startup"

人物分析の場合

段階的検索アプローチ:
1. 具体的な人名 "John Smith"
2. 役職 "Manager", "Developer"
3. 部門 "Sales", "Engineering"

プロジェクト分析の場合

段階的検索アプローチ:
1. プロジェクト名またはキーワード
2. 技術領域 "AI", "Web Development"
3. ステータス "Active", "Completed"

検索結果の解釈と選択

検索を実行すると、候補となるグラフパターンが提示されます。

選択基準の確立:

  • 関連度: 探索目的との一致度
  • データ豊富さ: 接続されているノード数
  • 分析価値: ビジネス的な重要度

インタラクティブな関係性探索

ノード展開による段階的探索

Explore の核心機能は、ノードをクリックして段階的に関係性を展開することです。

Node Expansion Process

実際の展開戦略:

第 1 段階:基点の確立

1. 検索で起点となるノード(例:特定の会社)を表示
2. ノードの基本情報を確認
3. 展開方針を決定

第 2 段階:直接関係の探索

1. 右クリック → "Expand"
2. 直接接続されたノードを表示
3. 興味深いパターンを特定

第 3 段階:間接関係の発見

1. 新たに表示されたノードを選択
2. さらなる展開を実行
3. 2-3ホップの関係性を可視化

パス(経路)の追跡と分析

実際のビジネス分析では、特定の 2 点間の関係性を調べることが重要です。

Path Analysis Example

実際のパス分析例:

課題: 2 つの会社が間接的にどのように関係しているか?

探索手順:

  1. Company A から開始
  2. 従業員ノードに展開
  3. プロジェクトノードにさらに展開
  4. 他の会社への接続を発見
  5. パスの意味を解釈

発見された洞察:

  • 競合他社同士でも人材交流がある
  • 同じプロジェクトに複数企業が関与
  • 業界内のネットワーク密度が高い

フィルタリングとフォーカス機能

Legend Panel による情報制御

大量のデータが表示されると、必要な情報に集中することが困難になります。

Legend Panel Filtering

効果的なフィルタリング戦略:

段階的絞り込みアプローチ

Phase 1: 全体俯瞰(すべて表示)
Phase 2: 主要ノードタイプに絞り込み
Phase 3: 特定のリレーションシップのみ表示
Phase 4: 詳細分析(最小限の表示)

分析目的別フィルタリング

組織分析時:
□ Company ☑ Employee ☐ Project
☑ EMPLOYS ☐ WORKS_ON ☐ MANAGES

プロジェクト分析時:
☐ Company ☑ Employee ☑ Project
☐ EMPLOYS ☑ WORKS_ON ☑ MANAGES

プロパティベースフィルタリング

より詳細な分析には、ノードやリレーションシップのプロパティ値による絞り込みが有効です。

実際の活用例:

売上規模での企業絞り込み:
Company.revenue > 1000000000 // 10億円以上

経験年数での人材絞り込み:
Employee.experience_years >= 5 // 5年以上

プロジェクト予算での絞り込み:
Project.budget > 5000000 // 500万円以上

実際のビジネス発見事例

ケーススタディ 1:隠れたインフルエンサーの発見

背景: 組織内での影響力を持つ人物を特定したい

Influencer Discovery

探索プロセス:

  1. 役職上は管理職ではない社員から探索開始
  2. その人物の直接的な関係者を展開
  3. さらに間接的な影響範囲を可視化
  4. プロジェクトへの関与度を確認

発見された洞察:

  • 正式な管理職ではないが、多くのプロジェクトに関与
  • 部門を横断した広いネットワークを保有
  • 意思決定に大きな影響力を持つ

ビジネスインパクト: この人物を重要なプロジェクトのキーパーソンに任命し、プロジェクト成功率が 25%向上。

ケーススタディ 2:顧客ネットワークの可視化

背景: B2B 企業での顧客間の関係性を理解したい

Customer Network Analysis

探索プロセス:

  1. 主要顧客から探索開始
  2. その企業の役員・元従業員を確認
  3. 他企業との人的つながりを追跡
  4. 購買影響力の連鎖を可視化

発見された洞察:

  • 特定の業界でキーパーソンが複数企業を移動
  • 元同僚ネットワークが購買決定に影響
  • クラスター内での情報伝播が活発

ビジネスインパクト: ネットワーク内のキーパーソンを重点的にアプローチし、新規受注率が 30%向上。

探索結果の保存と共有

Scene(シーン)の保存機能

発見した関係性は、後から再現・共有できるよう保存することが重要です。

Scene Saving Process

私の保存戦略:

命名規則の確立

分析テーマ_対象期間_バージョン
例: CustomerNetwork_2024Q1_v2
TeamStructure_Jan2024_final
ProjectCollab_Pilot_draft

保存タイミング

□ 重要な発見をした時点
□ 分析の節目(週次・月次)
□ プレゼンテーション前
□ 仮説検証完了時

チームメンバーとの共有方法

効果的な共有アプローチ:

  1. 保存した Scene URL の共有

    • 直接リンクでの共有
    • 同じ視点での議論が可能
  2. スクリーンショット + 解説

    • 静的だが説明付きで共有
    • プレゼンテーション資料への組み込み
  3. ライブデモンストレーション

    • リアルタイムでの探索実演
    • 質疑応答に即座に対応

高度な探索テクニック

仮説駆動の探索アプローチ

単なるランダムな探索ではなく、明確な仮説を持った探索が効果的です。

Hypothesis-Driven Exploration

実践的な仮説例:

組織分析での仮説

仮説: 「営業部とエンジニア部の連携が不足している」
検証アプローチ:
1. 営業部員から探索開始
2. プロジェクト参加状況を確認
3. エンジニアとの協働頻度を測定
4. 部門間のリレーションシップ密度を比較

顧客分析での仮説

仮説: 「特定業界の顧客は相互に影響し合っている」
検証アプローチ:
1. 業界トップ企業から探索開始
2. 役員・元従業員のキャリアパスを追跡
3. 他企業との人的つながりを可視化
4. 情報伝播パターンを分析

パターン認識による洞察発見

私が重視する可視化パターン:

ハブ構造の発見

  • 多くのノードが集中する中心点
  • 影響力の大きなキーパーソン・企業

クラスター構造の発見

  • 密に接続されたノード群
  • 同質性の高いグループ・コミュニティ

ブリッジ構造の発見

  • 異なるクラスターを結ぶノード
  • 情報仲介役・部門間調整役

次のステップ:開発効率化

Explore 機能での発見的分析をマスターしたら、次はより高度な Workspace 機能を学習しましょう。

第 6 回では以下を扱います:

  • クエリパフォーマンスの分析と最適化
  • スキーマ可視化による構造把握
  • 効率的なクエリ管理手法

実践のまとめ:

  1. 目的に応じた Query タブと Explore タブの使い分け
  2. 段階的な関係性展開による発見的分析
  3. フィルタリング機能による効果的な情報制御
  4. 仮説駆動アプローチによる価値ある洞察発見

次回: 第 6 回:もっと便利に!Neo4j Workspace の便利な小技集


著者: hnish - walk-with-ai AI/DX コンサルタント
最終更新: 2025 年 7 月 1 日